ただ行けばいいってものでは

 日本の麻生首相ホワイトハウスを訪問したと言うニュースを読みました。オバマ大統領とは挨拶を英語で交わしたけれど、相手はどうやら聞き取れなかったようだという記事。麻生さんはアメリカのスタンフォード大とイギリスのロンドン大学にそれぞれ留学経験があって英語が堪能だと言うのが売りだけど、散々な結果だったと言う、単に茶化すような記事でした。もっとも、肝心の会談の中身が何だったのかは記事からは読み取れませんでした。

 それはともかく、麻生さんも残念でしたが、この手の話の前提には、英語圏の国に留学経験がある人は英語が堪能、という認識が日本人にあるように思います。じゃあ、実際アメリカに数年暮らしたら英語が喋れるようになるの?というとそんなはずはありません。日本にずっといて英語に触れないよりはましになるけれど、英語に堪能になるとか、発音がよくなるとか、聞き取りが上手になるとか期待したほど効果はありません。

 日本にもたくさんの外国人がいますが、どれだけの人が日本語を喋れるようになるか?と考えると想像がつく思います。うまい人はびっくりするくらい上手に日本語を操りますが、5年、10年日本に住んでいても日本語に関心がない人は一向に喋れるようになりませんし、喋れるようになっても、早口な日本語や方言にはついていけないことがほとんどではないかとおもいます。決定的なのは、自分と同じ言語圏の人同士でいつもつるんで過ごしている人は、日本人の友達が大勢いる人に比べて断然喋れません。
 
 それとおんなじことで、英語圏にいても日本人同士でつるんで過ごしている場合はちっとも喋れるようになりませんが、Nativeの友達と過ごす時間が多いとどんどん上達します。
 例えば私のような家族で渡米していて、家にいるときは日本語で喋っている人よりも、独身でアメリカ人と呑んで過ごしている人のほうが多分格段にうまくなりますし、独身かどうかに関わらず、職場と家との往復で他の人と触れ合うことなく日々過ごしているよりも、アフターファイブを利用して地元のカルチャースクールに行って友達を作って週末は彼らと遊ぶ、というような過ごし方をしている人のほうが語彙や言い回しをどんどん覚えていきます。ただ外国に行けばいいってもんじゃあないわけです。 

 あとは言葉は喋らなければ忘れてしまいますから、かつて外国で暮らしていて、英語をそれなりに喋っていても、発音や聞き取りはやらばければ衰えるし、語彙も落ちてしまいます。麻生さんがどうだったかは知りませんが。結局言葉は生活の一部になっていてこそ使いこなせるんだと思います。