まだやってたのか

 大学院生を雇ったことにして、その給料を研究室にキックバックしてプールする裏金作りは、約10年くらい前まで、多くの研究室で行われていた事だと思います。大体10年くらい前に研究費がいい加減に扱われていることや、キックバックをしていることが問題になって、こういう組織的に行われた違法行為は一掃されたと思っていたんですが、まだやっていたんですね。正確な所は知りませんが、多分多くの研究室が昔はこういうやり方で正規の研究費では払えないような旅費や雑費の費用を捻出していたのだと思います。研究費として支払いが認められているものはかなり制限されていて、年度内に消費する事が義務になっているのに、現場で必要な経費には全然使えないという制約があった為だと記憶しています。
 けれど、こういう正規でないやり方は10年くらい前にどこも止めたのだと思っていました。このニュースで驚いたことは二つ。一つ目は、給与のキックバックが問題化されてから10年以上たったのにまだやり続けていた事です。医学部だからこそ続けられたのかも知れません。医学部の医局制度や講座制の存続は、旧態依然としていて、いつまで教授=殿様のようなシステムがづつくのかと半ば呆れながら見ています。
 もう一つは、ポスドクの給与の異常な低さ。1ヶ月の給与が10万円ってなにさ。給与が上がっても15万円と言うのは、異常です。雇用の概念がおかしいとしか思えません。子持ちの家族が月10万や15万円でまともに暮らして行ける訳ありません。アメリカで生命科学系の研究をしているポスドクに、10万円で働きませんかと言ったら、頭おかしい人だと思われますよ。人をバカにするのにも程があります。
 時々、アメリカにポスドクで来るお医者さんで、ほぼ無給かもしくは通常の半額以下の給料でもいいからポスドクをしたくてやってくる方がいますが、これは多分日本の医学部の標準的な給与の感覚で来ているからかもしれません。
 医者の資格があって、もしくはPhDがある人が10万円で研究しろと言われても、頑として拒否するべきです。こんな給与形態を許している医学部は、自身が異常だと言うことをいつになったら自覚するのでしょうね。
 15万円で子どもと妻を養えと言われるのは、極貧生活を強制されるのと同じです。生きて行ける訳がない。多分、このアホな阪大の医学部の研究室は、氷山の一角で、まだまだこういう慣例を続けている大学は多いんじゃないでしょうか。阪大の調査委員会っていったって、どうせ適当に甘い処分をするんでしょう。不利益を被っていた当事者にたいしてはなんの補償もしないかも知れませんし、やめたあとという教授にも何の影響も及ぼせないでしょう。他の研究室についてもどの程度調べられるのか、調べる気があるのかクエスチョンです。ただの希有な一例として片付けられたとして、国の機関がクレームをつけなかったとしたら、文部科学省も感覚が異常としか言えません。
 若手の研究者や大学院生がただのコマとして扱われているこういう訳の分からない記事を見る度に、怒りを覚えます。雇う側(教授)がかつて自分たちが雇われる側(学生やポスドク)だった時代に自分たちが扱われていたように今の若い世代を扱っているのだとしたら、その人たちがそう言う感覚でいるから若い研究者が希望を持てないんだと思います。

阪大キックバック受け 研究生「悩み続けた」 (1/2ページ)
2010.6.13 02:00
 「大学には打ち明けられず、悩み続けた」。大阪大学大学院医学系研究科・医学部の元教授(64)の研究室で約1年間にわたり、給与の半額をキックバックしていた中国籍の元特任研究員の30代男性は、悔しそうに話した。公金が不可解な流れを経て、研究室側の銀行口座に入金されていた事態に、阪大も調査に乗り出した今回の疑惑。関西随一の名門医学部の研究室で何が行われてきたのか。
 阪大・吹田キャンパス(大阪府吹田市)にそびえる医学系研究棟9階の一室。この研究室の中で、不透明な金のやりとりが繰り返されていたという。
 「疑問に感じながらも30万円をもらって15万円を返すことに承諾した」。産経新聞の取材に対し、男性は研究室側からキックバックを持ちかけられた平成20年秋のことをこう話した。
 男性にはこの3カ月ほど前に子供が生まれていた。当時の給与は10万円。新たに家族が増えた家庭には、決して満足な額ではなかった。そこに舞い込んできたキックバックの依頼。手取り額が約5万円アップするだけに、男性は承諾し、翌月から振り込まれた約30万円のうち、半額の約15万円を指示通りに事務担当者に渡していたという。
 ただ、男性は不思議に思いながらも、研究室のトップだった元教授には直接この件について尋ねることはできなかった。「教授は絶対的な存在だったから」という。現在、男性は研究室を辞めているが、「日本でこんなことがあるのはとても残念だ。中国ではありえない」と話した。
 また、別の特任研究員の女性も同じころ、研究室の上司から給与を増やす代わりに、口座への振り込みの半額を研究室に戻すよう強要された。しかし、女性は「不正ではないか」と思い拒絶。その数日後、再度「できないか」と尋ねられたが、改めて断ったという。
 女性の給与は当時約10万円だったが、こうしたやりとりのあった後の21年6月には約3万円に減額された。特任研究員の給与は時給制で、研究室が雇用条件を決める。女性は6月以降、1日1時間の勤務となった。
 女性は「上司には誰も逆らえない。私が従わないから、腹いせでやったのは明らかだ」と訴えている。
 この件で調査委員会を立ち上げた阪大は「給与が全額本人に支払われていなかったとすれば大きな問題。厳正に調査する」としている。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100613/crm1006130201003-n2.htm