卒研配属をやめれば

 大学のシステムはうまく機能していないと思います。そもそも大学を運営している人たちが、大学、大学院システムが機能していると思っているとは思えません。一つの研究室で、研究をする学生たちが20人以上いて、それを指導する研究者が一人か二人なんて状況は、どう考えてもありえません。

 そんなに沢山のテーマ全部で国際誌で戦えるような質の高い研究が出来るはずもないし、それが出来たら世界のトップラボになれます。じゃあ、どんな研究をやっているかというと、4年生は卒業研究のためのちょっとしたテーマ、大学院の修士の学生もやはり論文にするための微妙な研究テーマを何ヶ月もかけて指導するわけです。誰が指導するかと言うと、本来なら指導教官がすべきなのですが、実際は大学院の先輩が、学部生や大学院の後輩を教える構図が出来上がります。指導すること自体はする側にとって勉強になりますが、1,2年の経験差しかないのに指導された方はたまりません。自分自身もかつて大学院生のときに後輩に教える立場になっていましたが、とても人を指導できるレベルではなかったと今は悔やまれます。

 もういっそのこと、学部4年生での卒業研究とか、大学院修士課程での修士論文とかやめればいいんだと思います。さらに言えば、4年生時点での研究室配属すら、必要ないと思います。微妙な卒業のための研究をするくらいなら、もっと別なことに時間を費やすべきだし、実際のところ、4年生の卒業研究なんて就職活動が終わった秋以降から突貫工事で2,3ヶ月で仕上げるわけだし、そんな短期間で研究室が狂ったような状況に陥るくらいなら、無いほうがましだとすら思えます。もっとしっかり授業をやって、授業の中で擬似研究発表をするなり、プレゼンテーション技術を磨くなりすればいいんではないかと思います。

 まあ、このやり方はアメリカのやり方なのですが、こちらに来てからこの方が全体の効率が上がると感じています。この国ではUndergraduate student(学部生)は授業だけ。希望して面接に通れば、研究室で研究の一部をやらせてもらえるけれど、必須ではありません。授業をキチンと受けて、勉強してそれで単位をとれば卒業が出来ます。修士課程も同じ。その代わり授業はキッチリとしているようだし、プレゼンテーションや実習授業も結構あるようです。

 日本も、研究室で働くのはもう博士課程の院生とポスドク、そして教授にすればいいんです。学生を低のいい労働力として使えない状況にすべきだし、その分教授が研究に直接関われる体制にしなきゃいけないと思います。そしてもっと若い教授が多く生まれるべきだし、実際それだけの実力がある人は多いはずです。

 自分達のシステムはうまく回っていないんだ、と政府もいい加減に気づくべきです。根本的に変えないと、何も良くはならないと思います。

 書いていて思ったけれど、じゃあ、誰がシステムを変えられるんだろうって言うこと。文部科学省?大学?学部?理学部は卒業研究が無いらしいから、多分学部レベルでやり方を変えられるんだと思うけれど。