色々考えさせられる

 日本では事業仕分けスパコン予算が凍結、その後復活とドタバタがありましたが、実際のところスパコンが何に使われて、どういう利用価値があって、どれくらい効率的に運用されているのかという話はあまり報道の話題にならなかったような気がします。多分、文部科学省側や学者側の説明もされていないし、マスコミも興味が無かったのかもしれません。予算復活の際にはノーベル賞受賞者が記者会見したりしましたが、スパコンについての知識なしにただ注目されていたように思います。
 研究機関間で共同利用できるスパコン施設があれば、天文、製薬などの膨大な情報を扱って計算しなければならない分野にとっては、非常な助けになりますが、そういう現場の立場からの話はあまり宣伝されていないような気がします。

 以前、筑波大はスーパーコンピュータを使って、73時間36分(約3日)で、2兆 5769億8037万桁を計算(当時世界最大桁)したそうですが、最近パリの技術者は普通のパソコンを使って131日かけて2兆6999億9999万桁を計算したそうです。片や億単位のお金を使って作った2千倍計算速度が速いコンピュータに対し、時間はかかっても2千ユーロ(約27万円)で買える普通の速度のコンピュータでもそれ以上の桁数まで計算きるわけですから、面白いものです。
 かと思えば3800万円で国内最速のスパコンを作った人もいるわけですから、実際この分野の現状はどうなってるんでしょうね。

 一言にスパコンって言っても、計算に要する時間、予算、1度に利用できるユーザ(プロセス)、など色んな要因があるはずですし、何に利用するのかによってチョイスも違ってくるはずです。トピック的に面白いニュースは報道されても、その分野の現状は分りやすく説明はされていないのが偏った見方を生む原因になっているように思います。

円周率の計算けた数で世界記録を樹立
(計算科学研究センター:2009.08.17)
 筑波大学の計算科学研究センターは,円周率の計算けた数で2兆5769億8037万けたの世界記録を樹立しました。計算に使用したのは,2008年(平成 20年)6月から同センターで運用を開始している「T2K筑波システム」という,一秒間に約95兆回の計算ができるスーパーコンピュータです。
 これまでの記録は,東京大学情報基盤センター及び(株)日立製作所のグループが,2002年に達成した1兆2411億けたで,今回の記録はそれを約2倍更新しました。なお,今回の世界記録は,スーパーコンピュータの性能・信頼性等の評価のための高性能計算の一例として実施した結果,得られたものです。
 円周率は無理数として知られており,紀元前3世紀にアルキメデスが円周率の値を「3.14」と計算して以来,円周率の値をより正確に求める努力が続けられてきました。
 今回の計算では超並列型スーパーコンピュータ「T2K筑波システム」のうち640台を用い,さらにプログラムの効率化によって,計算けた数は約2倍の2兆 5769億8037万けたに増えているにもかかわらず,計算時間は73時間36分(検証計算時間を含む。)と,これまでの1/8以下に短縮することに成功しました。
 2兆5769億8037万けたの円周率が正しく計算されたことは,二つの異なる公式を用いて計算した結果を比較し,一致していることにより確認しました。また,今回の計算においては一度もシステムに不具合が発生しなかったことから,「T2K筑波システム」の高い信頼性を検証することもできました。
筑波大学ホームページより

筑波大の円周率計算の記録破る 仏技術者が通常機器で
2010.1.11 21:04

 フランス公共ラジオによると、筑波大学計算科学研究センターが昨年8月、スーパーコンピューターで樹立した円周率の計算の世界記録が11日までに、パリ在住の情報処理技術者によって破られた。技術者は通常のコンピューターを使い筑波大の記録より約1230億けた多い、2兆7千億けた近くまで計算したと発表した。

 新記録を発表したのは、デジタルテレビ関連の仕事をしているファブリス・ベラールさん。通常のコンピューターに5個のハードディスクを増設し、主計算と検証計算を含め131日間かけて2兆6999億9999万けたまで計算した。

 ベラールさんは「筑波大の機器は、私のものより計算速度が2千倍近く速い」と認めた上で「これまでスーパーコンピューターが樹立してきた記録を2千ユーロ(約27万円)弱のコンピューターが破った点に意味がある」と語った。(共同)

スパコン開発で「ゴードン・ベル賞」 長崎大助教ら受賞 「国内最速」安価で実現
 長崎大工学部の浜田剛助教(35)のグループは26日、国内最速のスーパーコンピューターを開発し、米電気電子学会の「ゴードン・ベル賞」(価格性能部門)を受賞した、と発表した。同賞はスーパーコンピューター分野のノーベル賞といわれ、市販の画像処理装置(GPU)を使って安価に高速計算を実現したのが受賞理由。同部門の受賞は8年ぶりという。

 政府の新年度予算概算要求の事業仕分けでは、次世代スーパーコンピューター開発予算(267億円)が大幅削減とされたばかり。浜田助教は「高性能の計算機は重要だ」としながらも、巨費を投じた従来の開発方針について「素直にいいとは言えない。方向性が逆」と述べ、低価格化が可能との見方を示した。

 浜田助教らのスーパーコンピューターはGPUを760個並列につなげたもの。1秒間に158兆回の計算ができ、国内最速の「地球シミュレータ2」の同122兆回を上回ったという。

 GPUを大量につなげられるプログラムの開発が成功のカギとなり、数百億円規模が必要とされる開発費用を3800万円に抑えたという。天体物理学などの複雑な計算での活用が見込まれる。

=2009/11/27付 西日本新聞朝刊=