大学の経営 − 研究費、駐車場

 日本の大学は運営の多くを入学金、授業料、そして国からの助成でまかなっていると思いますが、アメリカの大学はどうなのでしょうか。聞いたところではちょっと違うようです。私が働いているのは私立大学ですので、そのケースを元にして書くことにします。州立大学ですと大分システムが違うかもしれません。
 もちろん授業料、これは日本の3倍以上高額で、その分学生の人数も少ないです。これについては以前のエントリーで記述しましたのでここでは書きません。学部生の授業料 - upk515
 次に研究費の上納。言葉は悪いですが、それぞれの研究室(特に理系)は研究資金を外部から獲得することが当然とされます。そしてそのうち半分近い予算が大学の資金として上納されます。2千万円の予算をとっても実際に使えるのは半分くらいになってしまうわけです。だから大学も外部資金をふんだんに獲得できる研究者をいかに獲得するか、に労力を裂くことになります。
 このことは、金の切れ目は縁の切れ目という関係も生むことになります。研究費を外部獲得することができなくなると、研究に使えるスペース、人員が減らされ、結果として研究室を維持できなくなり、失職します。このルールはとてもシビアで、実際私が働いている研究センターでも資金獲得に失敗して失職した教授を知っています。教授が研究室を閉じざるを得なくなると、そこに所属していた学生、ポスドクは自力(もしくは教授が奔走してくれるかも)で次の所属先や職を直ぐに探さなくてはならなくなります。順調に研究を走らせていないと、どの研究室にも起こりうる現象です。
 その分、研究室運営を地道にやっていれば、安定したサポートを得ることができる点は利点だと思います。たいした研究をしない研究室は淘汰され、質の高さと、高い生産性を維持できる研究者だけが生き残るという全体としてみればいい循環になります。
 また、失職した研究者は、日本ですとアカデミックな業界にそのままのポジションでいられるケースは少ないのではないのでしょうか。そのまま年金をもらえる年齢になるまで待って引退か、どんな職でもいいから得て働くというケースになるかもしれませんが、アメリカでは研究者を辞めても、教育者としての道は残されています。研究室はもてなくても、授業を担当する教員として雇われることもあるのです。最前線で研究をしていた人ですから、専門の授業をすることは比較的容易いはずですから、このようにして再雇用の道が開けます。もちろん起業したり、会社に就職する手段も往々にしてあり、教授失職=プータローという風になるわけではないようです。
 その他の大学の資金獲得にも色々あるようですが、その一つに、大学の駐車場の代金なんてものもあります。アメリカは国土が広いですから、皆さん車で通勤してきます。特に田舎の地方都市ではそうなります。車を止めるとこの安全性も大学は確保しなくてはなりませんから、それに割く人員も雇うことになり、経費もかかります。それを維持するための予算は、駐車している人から年額で駐車料金を取ることでまかなっているようです。職場から近いか、どのくらい歩くかによって料金は違うようですが、大体年額800-1000ドル近い額を払うそうです。もちろん、そんなお金を払いたくない人は職場の近くに住んで、自転車で来たりバスで来たりしますし、わざわざキャンパスから遠い場所の安めの駐車場を借りて、駐車場料金を節約する人もいます。このシステムがあるおかげで、利用者は駐車料金と言う余計な?お金を払うことになりますが、その分大学の運営が助けられているのも事実です。
 こうして改めて書くと、使うなら払う、払えない人は使えない、ということが原則なのかとも思ってしまいます。