人材確保と言う発想

 海外に出て生活をしようとしたとき、必然的に安定した収入を求めるようになります。一定期間の雇用が保障されていることや、住む場所やそのサポートがあるのは、働く側にとって魅力的です。家族や親戚が周囲にいて、自分自身もそこで生まれ育った土地なら、職を失ったとしても一定期間は何とかなりえますが、家族も知り合いもなく、誰の助けも求めることができないような状況では、その日暮らしでは生きていけません。
 記事を読む限り、コストを下げて、最低限の支出でNativeの英語教師を確保しようとしているように見受けられますが、逆に自分が日本語教師として日本語が通じない国に渡って、こういう扱いを受けたとしたらどうなるかと想像すると、とても生きていけないと感じます。仕事がある、だけでなく、それ以外のサポートもアドバイスもしないような職場では、働く気にもなりません。使い捨てではなく、経済面でも仕事面でも信頼関係があって初めて、人材が確保できるのだと思いますが、そういう発想自体がないのかもしれません。このケースの場合、ALTが住むアパートの契約すること程度のことを自治体が面倒くさがるというのは、いい人材を求める気がないと思わざるを得ません。”昨年の業者に比べてALT1人あたり31万円も安く落札した。”ということは、この31万円がALTへの人件費だとすれば、ALTの年収が31万円減った、もしくはその影響を受ける可能性がある、ということになります。いい人材を求めるんだったら、31万円多く支払ってでも、よく審査していい先生を呼べばいいのにと思ってしまいます。自分が授業を受ける側だったら、いい加減な先生よりも、やる気のあるいい先生に教えてほしいと思います。
 日本には多くの人が英語教師として来日していますが、きっと多くの人が生活を維持するのに苦労をしているのでしょう。きちんとしたシステムを整えているところ(この場合ここの自治体や英会話学校)にはいい英語教師が居つくでしょうし、そうでないところでは、高い質が保てないという差が生まれてくるのでしょう。この差はどこにしわ寄せが来るかと言うと、つまり私たちの子供の世代にくるんです。折角小学校のときに英語のなまの発音を聞けるチャンスがあっても、大人な事情の方が表に出れば、彼らの違う言語に触れる感動や、衝撃を半減させてしまうような気がします。

小学英語、外国人の指導助手巡る問題山積(7月28日14時54分配信 読売新聞)
 2011年度から必修化される小学5、6年生の英語の授業について、文部科学省が全国の公立小学校約2万1000校などを対象に調査を実施したところ、昨年度に小学校で実施された英語授業のうち7割近くで外国語指導助手(ALT)が活用されていたことがわかった。
 生の英語を学ぶ機会が定着してきたことが浮き彫りになった形だが、一方では、簡単に授業を投げ出してしまうALTもいるなど、“質”の問題が浮かび上がっている。
 「また辞めるのか」。7月中旬、埼玉県内の市教育委員会の担当者は、業者から米国人ALTが交代するとの電話連絡を受け、頭を抱えた。4月以降、辞めるのは3人目。1人目は「通勤時間が長い」と小学校に現れず、2人目と3人目は「一身上の都合」などを理由に、1学期の授業だけで、学校から消えた。2学期からは4人目が来る。担当者は「継続性が大事なのにこんなに交代するなんて。児童たちにも説明ができない」と困惑する。
 「人件費を切りつめるから辞めてしまうんだろう」と、埼玉県内のある学校長はうち明ける。この学校のALT派遣を請け負った業者は、入札で、昨年の業者に比べてALT1人あたり31万円も安く落札した。
 文部科学省によると、ALTを活用した小学校の授業のうち、国が仲介する「JETプログラム」によるものが25%で、残りは民間業者への委託など。
 この市の場合、40余りの小中学校にALT約20人を派遣する民間業者と契約を結んだが、校長は「風邪で半日休み、給与とボーナスを両方カットされたALTもいた。なりふり構わぬ業者が増えれば、教育の質は保てなくなる」と危機感を募らせた。
 関係者によると、業者の新規参入が目立つようになったのは、小学校英語の必修化が打ち出された06年ごろから。かつてはJETプログラムで採用したALTを自治体が直接雇用するのが主流だった。
 しかし、自治体側はALTが住むアパートを契約したり、交代要員を確保したりしなければならない。民間業者に委託すれば、こうした手続きは不要になるため、業者を活用する自治体が徐々に増えてきた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090728-00000597-yom-soci