研究の効率性のわけは

 アメリカに来て、研究の効率性がよく考えられた研究室の運営方法を取っていることに感銘を受けていたんですが、面白いブログエントリーを見つけました。やっぱりこの国はどこでもそういうスタイルで、逆に効率性を上げて、高い生産性を維持したラボでないと生き残っていけないんだと解ります。ほんと、研究計画を立てるときの姿勢の違いが同じ時間を過ごすにしても、質の違いを生み出すわけです。
 現実的には、これだけよく考えられたラボ運営をしていてもうまくいくラボもあればそうでないところもあります。うまく言っていてもテーマによっては、予想以上に手間がかかって結果が出るのに年数がかかる場合もあって、全体で見るともちろん効率がいいんですが。日本のラボで効率性を高めることを考えて運営しているラボがどれくらいあるだろうかと考えると、とても少ないと感じます。アメリカから学ぶ点は、やっぱりこういうところなんだろうと思います。
 こういった研究室運営は経営コンサルティングファームで行われている仕事のやり方とほとんど同じなのだそうで、要するに研究、科学、と言う分野に他の分野が以下に影響を与えていないのか、影響を与える余地が如何にあるかがわかります。

圧倒的に生産性の高い人(サイエンティスト)の研究スタイル
アメリカで研究するようになって最も驚いたことの一つは、日本では考えられないほど生産性の高い研究者が存在することだ。

<中略>

1. まずイシューありき

自分の考える世界観があり、そのパースペクティブ、ビューポイントに基づいてこういうことが言えるはずだ、あるいはこういうことを言えば意味(インパクト)があるというメッセージがまずある。これはぶわっとした話ではなく、もう論文のタイトルと言って良いレベルで決まっている。

つまり何に白黒つけたら良いのか、自分は何にケリをつけるのか(=issue)、というのが非常に最初の段階でクリアにあるのだ。そしてこれが次に述べる通り、そのサブサポートのレベルでも続く。

ちなみにこの白黒を付けるという姿勢がどの程度あるか、どのようなことに白黒つけようとするのかで、経営課題の場合、problem solverとしての質はほぼ規定される。何となく面白そうだから、でやるような人が大きなことにケリをつける、とどめを刺す可能性は非常に低い。


2. 仮説ドリブン

次に驚くのは、このような研究の構想を思いついた段階で、そのトップラインのメッセージ(=仮論文タイトル)がどのようなサポートとなるメッセージがあると言えるのか、明確に腑分けされており、その一つ一つがどのようなデータによってサポートされるべきか、ものすごく明確にデザインされていることだ。決して開けてみないと分からないよね、みたいなバカなことは言わない。あえてスタンスをとる。
<中略>
3. アウトプットドリブン

で、これに基づいてある種、その五つなら五つのパズルを埋めるように研究を進めていく。当然、この論理が崩れると、根底から見直しが必要という、issueの流れでいくと上流にある、かなり根源的な課題から取り組んでいく。

これは、こうやって聞くと当然のことのように思えるかもしれないが、殆どの問題解決者が出来ていない非常に重要なポイントだ。問題解決は常にここが崩れると話が崩壊するようなところから行わないといけない。例えば、恋人が出来ない人の問題解決であれば、会う人の数が足りていないのか、会ってからの成就の確率が低すぎるのか、がクリアにならなければ、問題解決は運頼みになってしまう。:)要は課題解決の論理のツリーがどこから始まると考えるべきか、ということでもある。

そして、アウトプットが出て論理に影響が出そうであれば、それに合わせて全体のストーリーライン、トップラインのメッセージを見直していく。したがって、当初の仮説の視点から見ると失敗しているのに、トップジャーナルに載ってしまうなんて言うことがいくらでもある。これはものすごいことだ。

また一つ一つのハコというか、サブ論点が、考えていた方法でらちがあきそうになかったら、すぐにその方法は捨てる。見極めは最大でも1-2週間程度。どんな方法でも良いから、その論点がサポートできれば良い。非常にプラクティカルだ。、、、ここもプロのコンサルタントの問題解決現場と同じ。いかなる手法を使ってもよいから論点にケリを最速でつけていく。


4. メッセージドリブン

こういう形で進めてきているので当然だが、テキストは非常に歯切れが良く、力強い。なぜそれが大切なのか、何をするために何をやったのか、その意味合いは何なのか、ここから入る。従って、投稿の通りも良く、掲載される確率も高い。

単に実験や研究結果からこれを実践するのがどれほど難しいかは、上の真逆なアプローチで何かやったことがある人であれば切実に分かるだろう。結果、テキストライティングのスキルは母国語だからということではなくて、非常に高い。曖昧さのかけらもない文章を織り込んでいく。
圧倒的に生産性の高い人(サイエンティスト)の研究スタイル - ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Between Neuroscience and Marketing