脳神経細胞のスイッチ開発

 かつてノーベル賞をとったMITの利根川さんがまた一仕事したみたいですね。彼はもともと免疫関係の仕事でノーベル賞を取りましたが、最近は脳科学の分野で遺伝子工学を用いた仕事をしています。しかし、かつてノーベル賞をもらうレベルの仕事をして、何十年か経っても人ができないような発想で新しい仕事をすることができるのはすごい。脳を可変的に活性化したり不活性化する技術は、脳を局所的に冷却してみたり、神経細胞を不活性化させる薬物を局所的に注入してみたりと、色々な手を尽くしてやられているけど、遺伝子操作で正にスイッチのように操作できるならすごい。これからこの技術でどういう風に発展するのか見ものです。
Transgenic Inhibition of Synaptic Transmission Reveals Role of CA3 Output in Hippocampal Learning, Toshiaki Nakashiba et al. Science DOI: 10.1126/science.1151120

その名は「DICE―K」…利根川教授が遺伝子操作技術開発(2008年1月25日04時27分 読売新聞)
 ノーベル生理学・医学賞を受賞した米マサチューセッツ工科大の利根川進教授が、脳の神経回路のスイッチを自在に「オン」「オフ」する遺伝子操作技術を世界で初めて開発することに成功した。
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 脳の神経がどのように働いているかを調べるための研究に有用な技術で、利根川教授は、大学と同じマサチューセッツ州を本拠地とする米大リーグ、ボストン・レッドソックス松坂大輔投手にちなんで、英文の頭文字をつなぎ、この手法を「DICE―K(ダイスケ)」と名付けた。25日の米科学誌「サイエンス」(電子版)に掲載される。
 これまでの方法では、実験動物の脳の一部を回復できないように人為的に壊して調べるため、広範に壊すことによる影響が出る。脳の機能を維持したまま、神経回路をピンポイントで操作できる今回の手法を使えば、状態がより正確に把握できるという。
 利根川教授は、マウスの実験で、3種類の遺伝子を組み換えて、記憶を担う脳の「海馬」という領域にある特定の神経細胞だけを操作した。この神経細胞は、「ドキシサイクリン」という抗生物質に反応して回復するようになっている。