基準の違い、考え方の乖離

 アメリカで売っているものは、基本的に、丈夫だよ!、壊れないよ!(実際にはよく壊れるけど)、一気に処理できるよ!細かい事考えなくとも、ボタン一つでやってくれるよ!がコンセプトの商品が多いです。家電にしても、車にしても。

 例えば電子レンジは、細かい設定はなくとも、パワフルで温める事がしっかりできればとりあえず売れます。細かい料理の設定なんて、あってもほとんど使われていません(たぶん)。洗濯機にしてもしかり。多少の設定はできても、とりあえず動けばおっけー。大きさはでかくとも関係ありません。スペースはありますから。当然、洗濯機と乾燥機は未だに別々に売っているところが多いです。もちろんお金を出せば一体型もあるのでしょうが、それは庶民層*1にはちょっと手が出なかったりします。

 車も、いまでこそ日本車のようなコンパクトで経済的な車がもてはやされていますが、基本的にアメリカ人はでかいものが好きです。だから、デザインもごつい。これには多少理由があって、アメリカのほとんどは荒野でできています。地方都市に行くと、町から少し離れただけでシカやらウサギやら、野生動物が平気で飛び出して来ます。つねに自然との戦いです。ですから、へなちょこの車では自分を守ってくれないわけです。結果として、必要以上にごつい車が売れることになります。他分これは今でも変わらないバイアスでしょうね。

 電車、他分これも同じ理由じゃないでしょうかね。大陸横断新幹線を作っても、途中のどっかで熊やら鹿やらが侵入して、大破してしまったら大変ですから、丈夫さを求めるのでしょう。日本とは逆の発想です。日本の新幹線は、線路をしっかり造って、動物が入り込めないようにして、常にメンテナンスをする事を前提にしてます。だから、軽い車体で弾丸のように走り抜けても、何にぶつかる心配もいりません。

 じゃあ、アメリカで日本でやっているような線路の保守点検がこまめにできるかと言ったら、他分無理でしょう。もしそれを日本の新幹線業界がアメリカに求めるならば、オートマチックに完璧にメンテナンスしてくれるようなシステムを付けて売らないと売れないと思います。誰でもできる簡単なやり方があれば、たぶんアメリカ人はよろこんでやるでしょう。そのうえで、軽い車体の必要性を説かれれば、納得するかもしれません。

 土地によって、求めるものは違いますから、それにあわせた商品を作る必要があるかもしれません。

新幹線が貨物列車と衝突しても…? 米の基準に日本困惑
http://www.asahi.com/business/update/0207/NGY201102070038.html

2011年2月8日1時2分

 新幹線が貨物列車と衝突しても乗員乗客が生存できること——。高速鉄道の安全基準づくりを進めている米国で、こんな案が検討されている。新幹線が基本的に専用の線路上を走る日本では想定されていない事故だけに、米国への新幹線輸出をめざすJR各社や鉄道メーカー、輸出を後押しする政府は困惑している。

 国土交通省鉄道局によると、米連邦鉄道局が1月中旬までに、川崎重工業日本車両製造など世界の主要鉄道メーカー9社に対し、13項目にわたる安全基準案を示した。

 その内容は、停車中の貨物列車に時速32キロで衝突しても、新幹線の乗員乗客が生存できる▽18トンの鉄製コイルを積んだトラックに衝突しても、新幹線の運転士が生存できる▽重さ6キロの鉄球が運転席に衝突しても、車内まで貫通しない、などだ。

 各メーカーは、米側に対応可能か、回答を求められている。JR東海は車体の強化について、対応可能と回答した。だが、同社幹部は「本音では強化する必要はないと思う」と漏らす。

 日本の新幹線は、衝突事故を想定しないぶん、車体が軽く、省エネ性能が高いうえレールへの負荷が少ない利点がある。米国輸出でもPRしている点だが、「米国の基準に沿えば車体は改造で重くなり、燃費も悪くなる」(国交省の担当者)。

 国交省は、車体強化より信号システムの整備など、事故防止策に力を入れるよう、米側にアドバイスしているが、「日米で鉄道の思想が違い、認識の差は大きい」(同担当者)と苦戦している。

 JR東海が輸出をめざす米フロリダ州高速鉄道計画は、早ければ2月にも入札へ向けた手続きが始まる見通し。車体から窓やいすまで、高い強度が求められる可能性が高く、日本企業の壁になっている。(信原一貴)

*1:どこを庶民とするかによるけど