組織的安全管理

この間日本に帰国したTaroと話をしていたとき、化学者でもある彼は実験をする時に、安全管理にどれぐらい気を使って実験をしなくてはいけないか話してくれたのを思い出します。一つ手順を間違えたら爆発する可能性があるのが化学ですから、文字通り命がかかっています。Tkが研究する生命科学の分野でも、生物系の実験ですから感染の危険性も伴います。厳格なルールのもとに細心の注意を払って実験します。危険を伴うのはどの分野でそうでしょうが、生物系分野では化学とは違った意味での危険が伴います。

 一般に安全管理に関しては、日本のアカデミアよりもアメリカの方が慎重かつ厳格に管理されています。申請した手続き通りに作業する事が義務づけられていますし、なにか事故があった時には原因究明、事故予防策を確立しなくては行けません。ラボ単体ではなく、関係部門の人たちがやり取りをして事故が起こらないような環境を作っています。手間はかかりますが、その分現場の人間にとってはいい環境でもあります。

 研究室の内部の事は、研究室だけで管理する傾向がある日本のアカデミアでは、もうちょっと安全管理を組織的に体系づける必要があるように思います。

東京農工大で化学実験中に爆発、大学院生が重傷
 22日午後9時15分頃、東京都小金井市中町2、東京農工大小金井キャンパスの工学部2階にある応用化学部門の実験室で、「薬品が爆発した」と119番があった。東京消防庁と警視庁小金井署、大学によると、この爆発で、大学院2年の男性(23)が左手小指を失ったほか、右腕をやけどするなどの重傷を負って病院に運ばれた。男性は当時、一人で化学実験を行っており、突然爆発が起きてビーカーが破裂したという。同署などで原因を調べている。
(2010年10月23日00時31分 読売新聞)