科学者が読んで、いいと思う科学記事の書き方

 偉そうにいえるほどの科学者じゃないのですが、ニュースに記載されているサイエンス記事ほどいい加減なものはないというくらい、大手新聞の科学記事はテキトーに書いてあると感じます。

  • タイトルが誇張されている。読者の興味を引くようなタイトルにするのはいいが、記事の内容とは程遠いくらい誇張されすぎていることが多い。
  • 研究には必ずポジティブな側面とネガティブな側面があるはずなのに、いいところしかかかれていない。
  • 記事の元になった研究が掲載された学術雑誌が載っていない。専門家から見てどの程度重要な研究なのかが誰もわからない。
  • 誰の研究なのかがあいまい。教授の名前は載っているが、実際に研究を遂行した人の名前は載っていなかったりすることが多い。
  • 専門用語を間違えて使う。専門用語にはそれぞれ定義があって使われているのに、その定義を確認することなく適当な造語を当てはめていることがある。

いい加減なサイエンス記事を書かれると、実際の科学の現場が理解されにくくなってしまうと思います。

今日読んだこの記事は、その点よくかかれています。

携帯の電磁波がアルツハイマーに効く?
Ker Than for National Geographic News January 7, 2010

 携帯電話が人間の脳に悪影響を与える可能性については何年も前から議論されてきた。しかし、その携帯電話がアルツハイマー病の進行を抑える可能性があるとする研究が発表された。

 何かの間違いではない。遺伝子操作を施したマウスを利用した今回の研究によって、携帯電話から放射されるマイクロ波が、アルツハイマーの予防に効果があるばかりか、アルツハイマー病様の症状を改善する可能性さえあることが明らかになったのだ。

 実に驚くべき結果で当初は信じられなかったと、研究の共著者で南フロリダ大学神経科学者ホアン・サンチェス・ラモス氏は言う。「この効果は実に画期的で、にわかには受け入れがたかった。マウスを取り違えたにちがいないとか、(携帯電話の)電源を入れ忘れたと冗談を言ったほどだ」。

続きの文章はこちら→ http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=80585694

この記事には、研究の具体的なプロセスも書かれていますし、研究結果を主張するにいたった根拠も分りやすく書かれていて、なおかつ、その研究に対する懐疑的な意見も第3者のコメントを取って書かれています。最後にはどの専門誌に載ったのかも書かれていて、読んでいてはぐらかされた感じがしない、いい記事です。