科学の衰退

 事業仕分けにより大幅に削減された科学技術費について、旧帝大+早慶の学長、ノーベル賞受賞者がそれぞれ声明を出したようです。どの学会でも反論や、文部科学省に対する意見をまとめて出そうとしているし、科学者のソサエティーでも議論が繰り返されていて、教授、ポスドク、学生、どのレベルでも今重要だと捉えられている問題です。というか、業界そのものの死活問題ですから。科学業界の体質や、予算の配分、選考の基準など改善の余地はたくさんあるものの、全体の予算をバッサリ削減されてしまうと、科学界の衰退を招くというのが大筋の意見だと思います。
 とはいえ、この事業仕分けという試み、いい刺激になっていると思います。文部科学省の官僚が如何に自分達がやっている事業の意義を説明できないのか、システム自体が、科学と技術の違い、基礎科学の意義を分っていない仕分け人から指摘されるような矛盾や不明瞭な点を抱えていることが浮き彫りになりましたし、いざとなれば科学界全体がこれだけ反論するんだということが分りました。
 これからどうなるか分りませんが、しばらく注視している必要がありそうです。

事業仕分け:科技予算削減「世界潮流に逆行」 旧帝大学長ら声明
 東京大、京都大など旧7帝大と早稲田大、慶応大の9大学の学長が24日、政府が事業仕分けなどで科学技術予算の削減を提案している状況に対し、「世界の潮流に逆行し、さらなる国家の危機を招く」として見直しを求める共同声明を発表した。有力大学の学長が共同で政策決定過程に発言することは異例だ。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091124dde041010010000c.html

ノーベル賞受賞者らが仕分け批判で集結 「世界一目指さないと2位にもなれない」科学技術予算の削減を判断した事業仕分けについて、利根川進氏や江崎玲於奈氏などノーベル賞受賞者らが緊急声明を発表。東大で会見し、見直しを訴えた。
 「事業仕分け結果は、科学技術に関わる人材を枯渇させ、取り返しのつかない状態を引き起こす」――利根川進氏らノーベル賞を受賞した科学者など6 人が11月25日、政府・行政刷新会議による事業仕分け結果を批判する緊急声明を発表した。6人は東京・本郷の東京大学で記者会見を開き、慎重な議論と科学技術の重要性を訴えた。
ノーベル賞受賞者らが仕分け批判で集結 「世界一目指さないと2位にもなれない」 - ITmedia NEWS

「取り返しつかない」ノーベル賞受賞者が仕分け批判
 4人のノーベル賞受賞者を含む5人の科学者が25日、東京・本郷の東京大学で記者会見し、政府の行政刷新会議の「事業仕分け」で科学技術予算を削減する判定が相次いでいることを厳しく批判した。
 日本を代表する科学者がそろって国の政策を批判するのは極めて異例。研究現場の危機感が浮き彫りになった形だ。
 会見したのは、ノーベル賞受賞者江崎玲於奈利根川進野依良治小林誠の4氏と、数学界のノーベル賞と言われる「フィールズ賞」を受賞した森重文氏。
 小林さんは「科学技術で世界をリードするという鳩山政権の政策とどう整合性があるのか、全く理解できない」と指摘。米国での研究歴が長い利根川さんは、経済が悪い時でも科学技術に投資し、将来を見据えて人材を育成していく、とするオバマ大統領の発言を紹介し、今回の仕分けについて、「別世界のこと」と皮肉った。
 5人は「着実な知の積み上げの継続が中断されると、人材が枯渇し、取り返しがつかない事態に陥る。科学技術創造立国とは逆の方向」とする緊急声明を発表した。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20091125-OYT1T01155.htm