やる気と情熱さえあれば

 私がポスドクをしている大学には医学部から文学部まで色々あるのですが、大きな特色として音楽学部をもっていることが挙げられます。E音楽学校という音楽学部はキャンパスもメインのキャンパスからは完全に離れていて、ダウンタウンのど真ん中。大きいコンサートシアターも持っている由緒正しい音楽学校のようです。音楽専門の図書館も持っていて、その図書館は全米で一番大きく、重要な楽譜があるのだとか。
 そこに通っている同じアパートに住む友達のジョナサン。かつて日本に住んでいたことがあるだけあって日本語も操る彼は、大学院でピアノを専攻しているピアニストです。
 昨日は彼の家にE音楽学校のPhDの試験(オーディションと呼ぶらしい)を受けるために別な州から来た日本人が滞在していました。彼は日本の大学で物理を専攻していたのですが、音楽を学びたいという情熱を抑えられず、大学4年のときにアメリカの大学の音楽学部に転学してきたそうです。それ以来オルガンを専攻しているとか。学部、修士と転学した大学で過ごして、今度はPhDコースに入るのだそうです。日本ではちょっと考えられないくらいの分野変更ですが、アメリカでは人によって色んなケースがあります。専攻を変えたりすると、その分時間もかかりますが、楽しくやっている様子がよく分ります。
 日本だと音楽大学に入る人は小さい頃(それこそ3歳とか)から音楽一筋にやってきて初めて入学試験をパスできるような感じですが、こちらでは、やる気、情熱が買われるそうです。自分の意思で、やりたい!という気持ちが何よりも大切で、それさえあれば技術は後からついてくる、と言う考えでしょうか。小さい頃からそれだけを考えて技術を磨いてい来る人と、湧き上がってくる情熱をエネルギーにガンガンやる人と、どっちが幸せなんでしょうね?前者のほうが有利でしょうが、長い目で見ると後者のほうが楽しく続けられるように思います。
 ちょっと話はそれますが、日本では大学入試のときに学部を始めに選んで入学するところがほとんどですが、アメリカでは2つ以上の専攻を持つことができるシステムがあります。DoubleMajorといって、興味が複数ある場合、どちらも平行して学べるという利点があります。欠点はなんでしょうね?忙しくなる、これは欠点ではないし。大学のとき一度だけ専攻を変えようかと考えたことがあって、結局もろもろの理由でやめたんですが、そのときこのシステムがあったらよかったのに。私が知っている限り日本の大学でこのシステムがあるところは聞いたことがありません。日本でも、今のように可能性を早くから小さくするよりも、もっと柔軟に専攻を変えたり、興味を持続できるようなシステムがあるといいんですけど。