非常時に独自の判断ができるかどうか

 伊藤園では、地震発生直後すぐに各営業所が独自の判断で避難所に自社製品の水やお茶を60万本提供しています。しかも他のどの会社団体にも見られない速さで。"非常時に即座に飲料水、生活水として配布する"との社員教育で、営業所の独自判断で行動できたためです。非常時に、上に聞いてみないと分らないとか、担当者がいないかわらから無いなどということなく、各自の判断で行動できるのはすごい。

 そうかと思えば、相撲協会では震災地にボランティアに個人として行った貴乃花親方の行動を、"スタンドプレーは認めない"、"いい加減しにしてもらいたい"と理事長が圧力をかけたという話も聞きます。非常時に独自判断を許さない会社や団体もあるようですが、どちらがいいかは自明です。

 今回の地震津波では、自分の判断で行動できたかどうかが分かれ目だったような気がします。例えば、岩手県釜石市では、14の小中学校全校の生徒3000人が無事に避難していたそうです。これは地震津波のときにどういう経路で非難すべきかを日ごろから自分で考えるように防災教育をしてきた結果なんだとか。

 他にも、避難のときにダンプトラックに近隣住人を乗せて高台まで往復し、30人以上を救ったとか、電車に乗り合わせた警官二人が同乗者全員を高台まで誘導して無事だったとか、最悪の事態を想定して自分独自の判断で行動できた人は多くの命を救えています。

 非常の事態に、個人でも会社団体でも本当の姿が見えてくるもかもしれません。

 独自の判断をした人は、その多くの場合で日常から災害について意識して、なおかつ起こりうる事態に関する正しい知識を持っていました。だからこそ自分の判断に自信がもてたのでしょう。はたして、非常時に自分で判断できるか?もう一度自分に問い直してみたいと思います。

伊藤園 震災後3日で被災地に60万本飲料水提供できた理由
http://www.news-postseven.com/archives/20110403_16432.html

 3月11日に発生した東北関東大震災。ボランティアが震災直後の被災地にはいったとき、避難所で見たのは、積み上げられた伊藤園の飲み物ケースだったという。
 伊藤園では、震災後わずか3日間の間に、被災した岩手、宮城、福島各県にお茶やミネラルウオーターなど60万本を提供。そのスピードはどこよりも圧倒的に早かった。
 同社広報部の担当者は語る。「被災地にある営業所だけでなく、東北地方の営業拠点から可能な限り支援物資を提供しました。すべて各営業所が独自に判断して、飲料を配布して回りました。とにかく非常事態なので飲み物の種類を限定せず、倉庫にあるものをどんどん支援物資として運び出しました」
 その後、交通事情がある程度整ってからは本社からも追加支援。これまでにトータルで100万本を超える飲料を提供したという。それにしても、営業所、場合によっては社員ひとりひとりが判断して行っていたというのは驚きだ。そこには、全社員共通のある認識が存在するからだという。
「工場や倉庫にある飲料水は、販売物というだけでなく、非常時には救援物資に変わるものという認識でいます。昔から、“非常時には即座に、飲料水、生活水として近隣へ配布するように”という意識が、全社員に浸透しているんです。今回の震災での対応は当然のことであって、ボランティアとは考えておりません」(前出・広報部の担当者)
※女性セブン2011年4月14日号

津波から児童生徒3000人全員を救った釜石の3つの秘訣
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110409/dst11040923530082-n1.htm
2011.4.9 23:46
 津波から、自分の命を守り抜いた子供たちがいる。岩手県釜石市立の14の小中学校全校は、校内にいた児童生徒約3千人全員が無事。掛け替えのない命を救った独特の防災教育に注目したい。
 釜石市で防災教育に携わってきた群馬大学の片田敏孝教授(災害社会工学)は子どもたちに呼び掛け続けてきた。要点は三つ。一つは「想定を信じるな」。市教委とともに各地の津波浸水状況、避難経路を想定したハザードマップを作った。子供に登下校時の避難計画も立てさせ、基礎知識を刷り込んだ。しかしあえて「その想定を信じるな」と教えた。想定に頼れば、想定外の事態に対応できなくなるからだ。二つ目は「その状況下で最善の避難行動を取ること」。事前にどんな想定をしても、実際の津波は単純ではない。三つ目は「率先避難者たれ」。人のことは放って置いてもまず自分の命を全力で守ること。「必死で逃げる姿」が周囲への最大の警告になるからだ。

 『想定を信じるな』、この言葉を想定外想定外と言い訳ばかりしている原発関係者に贈りたいと思います。