モノガタリは結構怖い

 最近Yuが口に出す言葉があります。それは”シヌ”。

例えば、
なにか行動を制限されたりして、フラストレーションがたまっているとき、

”お父さん!ゴミ箱に捨てられてシンデヨ”
”もうベースメントにいってシンデテイーヨ!”

と言ったり、

何気なーい会話でも、さらっと
”お父さんねー、壁にゴンって頭ぶつけてシンジャッタの♪”
”お父さんどこにいったのかな〜?もうシンジャッタの?”

等と言ってみたりします。

 これを言い始めたときはかなり驚きました。TkもTmも日常会話でそんな言葉は使いませんから。これは何からきているかというと、どうやら、絵本に出てくる昔ばなしのようです。毎晩読み聞かせている物語には死ぬ話がいっぱい出てきます。 
 

 かちかち山ははじめはおばあさんが殺され、そして狸が背負った薪に火をつけられて危うく焼け死ぬところで、最後は海に沈められて死んでしまいます。はなさか爺さんは飼っていた犬が隣の老夫婦に叩き殺されて地面に埋められますし、猿蟹合戦はカニがはじめに殺されて、あだ討ちをされたサルはうすに踏まれて気絶します。竹取物語では一見して死人は出ないようですが、かぐや姫に無理難題を求められた男達のうち一人は船が沈没して死んでしまいます。


 死なないまでも、暴力的な描写のある話は、桃太郎の鬼退治や、一寸法師の鬼退治などですし、舌切り雀は何の罪もないすずめの舌がはさみで切り落とされてしまいます。

 
 死人が出ない物語と言えば何かと言うと、浦島太郎、鶴の恩返し、かさ地蔵くらいなものでしょうか。


 西洋の昔話のほうが結構エゲツナイ描写が出てきます。例えば、あかずきんや、狼と七匹の子山羊では、狼におばあさんと赤ずきんちゃんや子ヤギが丸ごと食べられてしまいます。そして最後には狼が生きたまま腹をはさみで切り裂かれて石を詰められて死んでしまいます。ヘンゼルとグレーテルでは、そもそも実の父親と母親に森に捨てられ、魔女に捕まり、ヘンゼルを食べようとした魔女をグレーテルがオーブンの中に生きたまま放り込んで焼き殺してした挙句に、魔女の宝石を盗んで父親の元に帰ったら、自分達を置き去りにした張本人の母親は死んでいるという話ですし、人魚姫は一方的な恋愛感情を抱いた相手の王子が他の人と結婚してしまったので、危うく王子様を殺しかけて最後は自分で海に身を投げて死んでしまいます。白雪姫では、実の母親が死んでしまった後に、継母がやってきて、自分が殺されそうになりながらも何とか生きながらえましたが、その後生きている事を知った継母が何度も何度も王女を殺しにきて、ついには毒リンゴを食べさせられて死んでしまいます。ご丁寧にガラスの棺桶に入れられて、なぜか最後は生き返りますが。

 ブレーメンの音楽隊や醜いアヒルの子、イソップ童話、おや指姫やシンデレラは平穏は話ですが、半数近くかそれ以上の昔話は、誰かが殺されます。そういえば、シンデレラも話のはじめに実の母親が亡くなっていますね。

 このように、挙げれば限がないほど死ぬことの描写を実は幼児は身近に聞いているんですね。でも現実に人が死ぬことは何の想像も出来ません。こういう言葉を使ったときには、どうしてそういう言葉を使うのか、本当に死んでしまったら悲しいことなどを話をしますが、多分理解するのまだ難しいでしょう。死ぬという言葉を知っていることは別に悪いことでも何でもないのですが、こうもあっさりと3歳児がこの言葉を使うことに驚いてしまいました。