言葉のマジック。言葉の定義は正確に

 旧日本育英会の取立てが厳しくなってきていますね。このBlogでも以前、何度か触れた話ではありますが、”奨学金”を返済しなきゃいけないってところに違和感を感じます。世界中のどこに奨学金を返済しなきゃいけない国があるかといえば、多分日本と、ヨーロッパの一部の国くらいじゃないでしょうか?奨学金はそれ以外の国では、貸与するシステムをとっているところは聞きません。一般的にscholarship,fellowshipも給付するものです。


 日本育英会の出している”ショウガキン”は奨学金ではなく、名前だけが同じですが”奨学金”という商品名称のただの教育ローンです。ただの借金に奨学金という言葉を使っているからおかしなことになるんです。そういう観点から言えば、この記事にも違和感を感じます。

奨学金返済地獄」夢断たれる若者たち―金貸しになった旧育英会
http://www.j-cast.com/tv/2010/09/07075267.html

奨学金を返せない若者が増えている。就業・生活が安定せず、返そうとしても返せない。若者への投資だったはずの奨学金が、若者の足を引っ張っている。事態は深刻だ。

Aさん(24)は図書館の司書になるのが夢だ。両親に負担をかけまいと、奨学金を借りた。しかし、就職難で1年契約の非正規職員にしかなれない。奨学金の返済を始めると、手取り10万円の収入に返済額は2万円。アルバイトを3つやったが、過労で体調を崩した。この4月、夢をあきらめて診療所の正規職員になった。

「夢を実現させるための奨学金が夢を奪った」

とAさんは言う。

奨学金の残高が2倍になった例もある。Bさんは工場を雇い止めになって以来定職がない。奨学金は140万円だったが、返済猶予期間が過ぎて、なんとか払える分だけでもと返済を続けたが、とても追いつかず、延滞金がかさんで残高は270万円にふくれあがった。Bさんは「債務に追われている感じ。八方ふさがりです」と話す。
(中略)
滞納者を金融ブラックリストに登録

宮本太郎・北大教授は「人材の育成のはずが、金融機関になっている」と批判、「奨学金制度の再設計が必要だ」と言う。


記事の中で出てくるこの言葉、

「夢を実現させるための奨学金が夢を奪った」(Aさん)
「債務に追われている感じ。八方ふさがりです」(Bさん)
「人材の育成のはずが、金融機関になっている」(宮本太郎・北大教授)


たぶん、この認識を引き起こさせているのが”奨学金”という言葉ではないでしょうか。育英会のショウガクキンは夢を実現させるためのものかどうかは関係なく、ただ単に借金ですし、債務に追われている感じなんじゃなくて、実際に借金の債務に追われているのです。日本育英会の事業目的は人材育成のはずではなくて、ただのローン機構だったのでしょう。お金を貸す以外の事業はしていませんから。
  
だから、旧育英会は「日本学生ローン機構」に改名すべきで、奨学金という単語の使用はやめるべきです。

ご利用は計画的に:旧育英会は「日本学生ローン機構」に改名すべきhttp://viking-neurosci.sakura.ne.jp/blog-wp/?p=4523

の意見には同感です。

 日本育英会がやってきた”ショウガクキン”という、低利子もしくは無利子でお金を貸すという事業自体はいいことですが、名前を奨学金としていることで借金を借金と思わせない効果が生まれているのは明白です。貸与奨学金は、夢を実現させるためとか、人材育成でもなんでもなく、ただお金を有利子でくれる、教育ローンだと明示すべきだと思います。

上記の記事のタイトル「「奨学金返済地獄」夢断たれる若者たち―金貸しになった旧育英会」、いや、育英会は元々金貸しだから。


関連記事