誰が専門家なのか

 最近の児童虐待のニュースを見て、Tmと二人で心を痛めています。歯科医から家庭センターへ、家庭センターから小学校へ連絡が行っていて、小学校の先生3人が家庭訪問しているのに本人には会えず、親が”二度としない”と口約束で言ったのを根拠にそれ以上誰も何もしなかった結果子どもが殺されてしまったのは、何でなんだろうと考えさせられます。
 多分、アメリカで同じ通報が会った場合、速攻で子どもは親から引き離され、かなり詳細に調べられるはずです。場合によっては親権が剥奪されるでしょう。
 虐待を受けている子は親を庇うことが多いそうで、この事件でも親を庇っていたようです。虐待を止めるのに関わるべき立場の人間が全員関わっているのに、何もできなかったのは根本的に何かシステム上間違っている所があるからとしか思えません。
 疑問に感じたのは、今回関わった人たちの中で、本当の児童虐待の専門家は一体誰だったのか?ってこと。学校の先生?それとも家庭センター?

パパはいじめない」虐待死の海渡君、親かばう

教科書の一節を写した海渡君の作品。区の展覧会に展示された
 東京・江戸川で小学1年の岡本海渡(かいと)君(7)が両親から暴行を受けて死亡した事件。警視庁は、傷害容疑で逮捕後、傷害致死容疑で送検した継父で電気工の健二容疑者(31)と実母で無職の千草容疑者(22)が、暴行を繰り返した疑いが強いとみている。

 近所の住民に「パパはいじめないよ」と話し、両親への気遣いを見せていた海渡君。それでも虐待のサインは何度も出ていた——。

(中略)

 ◆相談所や学校の連携足りず◆

 児童虐待の初期対応を担う江戸川区の「子ども家庭支援センター」は今回、「学校側が状況を把握出来ている」との理由で両親に面会していなかった。墨田児童相談所にも文書で情報提供しただけで、同相談所も「センターが対応している」として、海渡君が学校を休みがちになる10月以降、状況を把握することはなかった。

 厚生労働省では「学校任せではなく、三者の密な連携が必要だった」として、児童相談所を運営する都道府県に対し、「虐待の情報提供後、原則48時間以内に子どもを目視する」「安全確保のための一時保護を辞さない」ことを求める通知を出した。

(2010年1月27日14時32分 読売新聞)


 この記事を読む限り、直接現場に出向いたのは学校の先生で、家庭センターの人は出向かなかったことになります。仮に、家庭センターの人こそが児童虐待の専門家で学校の先生ではなかったとすると、専門家は動かず専門でない人が出向いたことになります。この仮定が正しいとすれば、実際に起こした行動は逆であるべきはず。
 素人の学校の先生が虐待をしている親の言うことから本当におこっている出来事を見抜くことができるとは思えませんから、ここは専門家の出番だったはずです。
 児童虐待を専門にしている人がどんな専門教育を受けて、どういう対処法を持っているのか知りませんが、専門家なら、予測できた事態だったんじゃないかと思えて仕方がありません。もし、家庭センターの担当者がそもそも専門家ではなく、ただそこに配属された素人が担当していたのだとしたら、そのシステムそのものがはじめから機能していないことになります。もし専門家の人が担当だったとしても、学校の先生に任せっぱなしで自分では行動しなかったのは、プロ意識が低かったととらざるを得ません。

 毎年子どもが虐待されて殺されていますが、虐待防止の為のシステムのどこがおかしいのかが曖昧なのがそもそもの問題だと思います。今回は江戸川区での事件でしたが、体質は同じでしょうからどの市町村でも起こりうる問題です。