海外で忠実に守られている礼儀作法

 日本でずっと稽古していると海外に目を向けることはほとんど無いのではないでしょうか。外国での合気道、というより、海外から日本に合気道の稽古に来る外国人を通して、日本人以外の人が合気道をやっていることを感じる程度の人も多いかもしれません。一旦海外に行って稽古をしてみれば分りますが、予想している以上に多くの人が、真摯に合気道に取り組んでいることが分ります。
 道場のなかで昔からあったのに今では日本では省略されつつある礼儀作法も、きちんと守られているのも驚かされることの一つです。例を挙げて言うなら、例えば木刀を使って稽古をする前には必ず正面に掲げて一礼する、その稽古が終わったらまた木刀を掲げて一例。恐らくこれは故斉藤師範のビデオや、合気道を広めていった師範たちがきちんとされていた礼儀作法が残されているのだと思います。日本では、剣の稽古のときにみんながこの作法を毎回きちんとしているわけではないので、私自身も自分を振り返ってハッとさせられました。
 もう一つ例を挙げると、遅れて入ってきた道場生は、師範もしくは指導者の招き入れがあるまで道場の端で正座して待っています。私が稽古をリードする日でも、遅れてきて胴着に着替えてきたのにずっと正座して稽古を見学しているクラブメイトがいて不思議に思っていたのですが、それも合気道を始めたときに習った礼儀作法を忠実に守っていたのだと気づかされました。もちろん、気づいた時点で直ぐに仲間に入ってもらいました。これも日本ではいまやあまり見なくなったことの一つです。
 あるアメリカの道場では、黒帯の道場生が遅れて入ってくると、みんなが稽古を一旦やめて、黒帯の人に一礼してからまた稽古を再開するそうです。自分を指導してくれる人には稽古中であっても礼を尽くす、ということが守られているのだと思います。
 海外に来ると逆に日本のよさを日本人以外の人たちが教えてくれます。