"弱まった"じゃない。”弱められた”

 大学教員を含む研究職といわれる職は20年ほど前からほとんどの若手のポジションは任期付きに置き換わっていっています。最近では准教授レベルも任期付きが多くなってきています。任期付きの職でも、3年ー5年で打ち切りと決まっているケースもあれば更新できるものもありますが、更新できるものであっても、上からの圧力で出ていくように言われるポジションも多く見かけます。

 研究者の若い世代の殆どは任期付きのポジションですから、結構な数の人がアカデミアを去っていっています。大型予算を持っていた人でさえ、それが切れて身分の保証がなくなって無職になったケースも実際あります。いい研究をしていて、いい論文を発表していたとしても、職が無くなれば競争力が無くなり、業界を去らざるを得ません。

 安定した職に就ける業界ではなくなっている業界からは徐々に人が去っていって、新しく大学院に入ってくる人も減っていった20年間を考えれば、当然の結果だと思います。

 「急激に弱まった」というのは間違いで、明らかに政策によって予算のバランスを崩され、選択と集中という方法で研究者間の競争力の差を広げられ、生きにくさが生まれた結果、「20年間の間に政治によって弱められた」というのが現実に起こったことでしょう。

 とりあえず運営費交付金を減らすのをやめて、選択と集中政策の方向転換をするべきだと思います。

 

 日本の科学技術「力が急激に弱まった」 白書を閣議決定

政府は12日、科学技術について日本の基盤的な力が急激に弱まってきているとする、2018年版の科学技術白書を閣議決定した。引用数が多く影響力の大きい学術論文数の減少などを指摘している。

 白書によると、日本の研究者による論文数は、04年の6万8千本をピークに減り、15年は6万2千本になった。主要国で減少しているのは日本だけだという。同期間に中国は約5倍に増えて24万7千本に、米国も23%増の27万2千本になった。

 また、研究の影響力を示す論文の引用回数で見ると、上位1割に入る論文数で、日本は03~05年の5・5%(世界4位)から、13~15年は3・1%(9位)に下がった。

 海外の研究者と共同で書いた論文ほど注目を集めやすいが、日本の研究者は海外との交流が減っている。00年度に海外に派遣された研究者の数は7674人だったが、15年度は4415人に。海外から受け入れた研究者の数も、00年度以降は1万2千~1万5千人程度で横ばいを続けている。

 白書は大学に対し、会議を減らして教員らが研究に割ける時間を確保することなどを提言。政府には研究への十分な投資や、若手研究者が腰をすえて研究に取り組める「環境の整備」などを求めた。(小宮山亮磨)

www.asahi.com